経済的に豊かな世田谷区

世田谷区は現在人口86万人 45万世帯 人口全国トップクラスの自治体です.所得水準は全国の自治体中第8位で 経済的に豊かな自治体です.

行政サービスや医療・教育サービスも充実していて 市民活動を行うNPO法人が500近くあります.

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経済的な豊かさとこころの健康の関係

経済的に豊かでサービスも充実している世田谷なのに なぜ今こころの健康の問題が重要なのでしょうか?ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士の研究によれば 収入がある程度を超えると それ以上増えてもこころの健康や幸せにはつながらないことが明らかになっています.こころの健康を高めるためには 経済中心の今までとは別のアプローチが必要なのです.


世田谷区のこころの健康問題

こころの健康を考える区民会議では これまで行政と協働して 世田谷区のこころの健康問題について統計データをもとに明らかにしてきました.こころの健康問題で最も深刻な問題は 自殺です.自殺率は通常男性の方が高いのですが 世田谷区では 20-30代と45歳以上の世代で 女性の自殺率が男性よりも高くなっていることが分かりました.この原因を考えましたが 女性を取り巻く現状は非常に多様であり こころの問題は1つの原因だけでは説明できないことが改めて良く分かりました.こころの健康問題の複雑さ・難しさを象徴しているデータになります.

 


縦割りでこころの問題に包括的に対応できない行政システム

経済的に恵まれた地域である世田谷区には こころの問題に対応する行政サービスが数多くあります.しかし こころの問題の背景はとても多様で 従来の役所の「縦割り」では 本質的に対応できない問題です.関連部署の連携だけでは不十分であり 原因を取り除いて問題を解決する今までのアプローチから根本的な発想・やり方を変えないと解決にはつながらないのです.


精神疾患があっても「ウェルビーイング」は高められる

ここでウェルビーイング(幸福感)の考え方がとても大切になります.一般的に 精神疾患があると人は不幸せになると思われがちですが 英国の研究では 精神疾患を体験していても 幸せを感じている人が一定数いることが分かっています.一方 精神疾患を経験していなくても ウェルビーイングが低く 幸せを感じられない人も一定数います.精神疾患の症状の有無と ウェルビーイングは トレードオフではなく 別の軸なのです.精神疾患という「問題」を取り除けば 幸せになる というわけではないのです.逆に 精神疾患を経験した人でも その経験から新しい価値観を見出し 精神疾患を経験する前よりもウェルビーイングを感じている人もいます.症状の完治ではなく ウェルビーイングの回復(リカバリー)・新たな発見(ディスカバリー)という考え方が こころの健康を考えるうえで 世界的なスタンダードになっています.


地域全体のウェルビーイングを高める

今までは 精神疾患の症状や精神疾患による問題を無くせばこころの問題は解決すると思われてきました.そのため 精神疾患を持つ人に限定した症状を無くすためのサービスが作られてきました.しかしこころの健康の問題はすべての人に関わる問題であり より広く地域住民全体のウェルビーイングを高めることが 地域のつながりを増やし 精神疾患で困っている人のウェルビーイングを高めていくことにつながると考えられるようになってきました.区民会議では こころの不調を抱えて今困っていらっしゃる方を支えるためには 住民全てを当事者としてウェルビーイングを高めていくアプローチが必要と考え 具体的な方法考えています.


さまざまな区民の方々の協力が不可欠です

これから世田谷は 日本の他の地域同様に 超少子高齢化社会を迎えます.現在元気で活躍されている方も 年を重ねる中で 認知症をはじめとするこころの問題の当事者となる方が激増していくと予想されています.また 介護疲れや子育てのストレスからこころの不調の当事者になる方も増えています.これからは 誰もが当事者になる時代です.これまで「こころの問題は私には関係ない」と思っていた方は ぜひこころの問題について関心を持ってください.また こころの健康問題にこれまで関わってきた支援者・専門家は 垣根を積極的に取り払い 様々な部門の支援者・専門家が横につながる必要があります.自分自身や自分の大切な人が当事者になったとしても 自分らしく活き活きと生活できるようにするためには 今までバラバラだった人のつながりを回復することが必要です.また ウェルビーイングを高めるための5つの方法のように 個々人がウェルビーイングを高める方法を生活の中に取り入れていくことも大切です.そのためにも今から多くの人たちの協力が不可欠です.

 

お読みいただきありがとうございました.少しでも関心を持たれた方は ぜひ区民会議やここからカフェにお越しください.お問い合わせもお気軽にください.お待ちしております.